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「天使の花はしご」(62)

(前のお話61の続へ) (初めてさんの第1話) (モクジ君)

 
 看護婦と医者はジョアンナの家に着くと、
「先生は上を見ていてください、私は足下を見ていますから」
 二人は長靴とコートを身につけたまま家の中に入り、
ランプの明かりの中に毒をもった小さな赤い点が見えやしないかと
恐ろしい期待をもって目を凝らしました。
二人の荒い息づかいが、静まり返った空気を揺るがしました。

「君、ジョアンナ夫人は本当に大丈夫なんだね?」
「ええ、奥様には、お部屋から出ないように言ってあります」
「彼女は流産したばかりというに、今度は毒グモ……悪いことは重なるものと言うが
それにしても、おっと失礼」
 ずっと上を見上げていた医者が、前屈みになった看護婦のお尻にぶつかりました。
いつものふたりなら、こんなとき軽口の一つもいったでしょうが、
今はそんな気分ではありませんでした。

「ジャンさんはこの部屋です。それじゃ、行きますよ――」 
 看護婦こわごわドアを押し開けると、
どうしたわけか、ベッドの上にジャンの姿がありません。
「大変! どうしたのかしら。
ジャンさん! どこですか!? 返事をしてください!」
「毒グモはまだその辺にいるかも知れん、落ち着いて探そう」
「先生ッ、落ち着いていたら、手遅れになるかも知れないんですよッ」 
「しかし君――」 

 彼らは知りませんでしたが、
ジャン(ジュリ)は、フィズに飲ませてもらった血清が効いているのです。
といっても、完全に毒が消えるまでにはもうすこし時間が必要でした。
それにしてもジャンは、一体どこへ消えてしまったのでしょう。
 その頃ジャンは、月明かりの下をひとり、歩いていたのです。
いいえ実際には、彼は1人ではありませんでした。
目の前の小さな光の後を追っているのでした。
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「天使の花はしご」(61の続)

(前のお話61) (奇特な方へ第1話) (モクジ君)


「この辺りじゃ余所者が死のうが生きようが、関係ないんだから」
 マーリンは苦々しそうに言いました。
看護婦はその様子が気になりましたが、今は血清を手に入れることが先です。
「長靴とコート、お借りしますッ、危険だから部屋にいて下さいッ」
 壁にかけてあったコートを手早く羽織って外に出ると、
月明かりの下で体じゅうのホコリを払い落とそうとするかのように、
身震いしてから走り出しました。

 看護婦が向かったのは、走って十分ほどの医師の家。
医師は彼女の短い話ですぐに事の重大さを理解し、
眠い目をこすりながら血清の入った小ビンを
すぐに出してくれました。
「その人は男性だと言ったね。
もしかするとこれだけじゃ足りないかも知れないが、
効果が切れていないのはもうこれだけだ。
小柄な女性一人分と言ったところだろう」
 ビンの中身はほんのわずかしか残っていませんでした。
「あとは時間との勝負か、私も――あ、おい!」
 看護婦は部屋を飛び出し、月明かりの中を走って行きます。
その後を、やや小太りの影が追いかけていきました。

 一方、残されたマーリンは突然ベッドの上で二つ折りになり、
声を殺して泣き出しました。
その唇がある一つの名前を刻んでいました。
「ライナス、ライナス――」
 それは毒グモに刺されてなくなった、彼女の一人息子の名前だったのです。

 
(続く)

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「天使の花はしご」(61)

(前のお話60へ) (まさかの第1話) (モクジはこっち)

 
 看護婦が急いでマーリンの部屋に向かおうとしたとき、ちょうど
ジョアンナが廊下に出て来たところでした。
「ジャン(ジュリ)さんは大丈夫でしたの?」
 不安げに訪ねるジョアンナを部屋に押し戻しながら、
「すみません奥様、いいというまでこの部屋を決して出ないで下さい」
 と言って勢いよくドアを閉めてしまいました。
「ちょっと待って! 一体何があったんですの、ジャンさんがどうかなさったの?!」
「いいえ、あの方は熱が、そう、ちょっと風邪を引いていたようで、熱があるんです。
うつったら大変ですから、部屋からないで下さいね」
 看護婦は、毒グモのことを言ってジョアンナにショックを与えたくなかったので、
うそを言いました。
「まあ、かわいそうに……でもあなたがそう言うのでしたら仕方ない、
分かったわ、私はここにいます。どうかジャンさんのこと、お願いね」
「ええ、お任せ下さい」
 看護婦は平静を装っていても、返事を返すその顔は、引きつっていました。

 二人がそんな遣り取りをしているあいだのこと。
ジャン(ジュリ)の枕元から、小さな赤いものがツーと床に滑り落ちていったかと思うと
闇にまぎれて見えなくなりました。
 そう、毒グモです。クモはフィズの家の井戸のそばでジャンをさした後、
襟元から這い出し、シャツのポケットの中に隠れて潜んでいたのでした。
看護婦の恐れていたことが現実になっていたのです。

 看護婦はマーリンの部屋へ走って行きました。
マーリンは寝間着を掻き合わせ驚き顔で起き上がりました。
「奥様に何か?!」
「いいえ、いいえ奥様は大丈夫です、ジャンさんなんです。
マーリンさん、ここの家にはまだ血清が残っていますか」
 マーリンの表情がみるみる険しくなりました。
「え、なんですって、血清?! 血清と言ったんですか?!」
「ええ血清です、数ヶ月前ここにも配られたはず――」
「そんなもの!そんなものここにはないですよ!」
 突然のマーリンの怒りに、看護婦はたじろぎました。
「ここじゃ余所者のことなんて、誰も助けちゃくれませんよ」
「そんな……」

(61の続へ)

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「天使の花はしご」(60)

(前のお話59へ) (モクジ君) 
 
 ジョアンナは、夜中にのどの渇きを覚えて、目を覚ましました。
 枕元に置いてある水を飲んで一息ついたとき、どこからか唸るような声が聞こえ、
彼女は驚いてコップを床に落しました。
「奥様、如何なさいましたか?」控えの間で目を覚ました看護婦が
眠そうな声で訪ねたとき、また低い声がしました。
「ジャンさんのお部屋からだと思うの。ちょっと様子を見に行きましょう」
「それなら私が。奥様はどうぞ、このままここで休んでいて下さい。お体に触りますわ」
 そういうと気丈な彼女はガウンを着ながら、ドアに向かいました。
 
「もし、どうなさいましたの、大丈夫ですか、もし」
 返事の変わりにうなされるような声が聞こえてきました。
看護婦がドアを押すと、すっと開き、ジャン(ジュリ)がベッドの上で荒い息をしているのでした。
急いで近寄り額に手をやると、火のように熱いのです。
「まぁ、大変だわ」
 
 看護婦が、何か手がかりはないかと布団をめくるとすぐに、
あごの下にいくつかの赤い発疹があるのが見えました。
彼女は突然はっとして、それからシャツの襟元を恐るおそる覗き込むと、
思ったとおり小さな傷跡が見つかったのです。
この症状は、ここ二・三ヶ月のあいだ診療所や往診先で
彼女が医師と共に治療に当たった毒グモに違いありません。
叫びだしそうな口を両手で覆い、静かに足下を確認しながら、ドアへと引き返すと、
すぐにドアを閉めました。
 ジャンの身体には、フィズの庭で毒グモに噛まれたときの毒が、まだ残っていたのですが、
看護婦は、この部屋に毒グモがいると思いこんでしまったのでした。
 
(続く61へ)

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「天使の花はしご」(59)

(前のお話58の続へ) (第1話へ) (モクジ君) 
ジュリは夫人の家の客間のベッで眠りながら、夢を見ました。

 天使の姿の自分が、天国で花の世話をしていると、急に強い風が吹き荒れて、
花首が千切れて吹き飛ばされていきました。
色とりどりの小さな点は青空に溶け込んで見えなくなり、
丹精込めて作り上げた花壇は見るも無残な荒れ地に変わっています。

「まぁ、酷いことするわね」 
 その声に驚いて振り向くと、フィズが立っています。
 ジュリは、自分のせいだと言われたようなきがして慌てて打ち消そうとしましたが、
声が出ません。

「いいのよ。花なんて、ほんのいっときの美しさでしかない、まやかしと同じ……」
 グリフォンの声がして辺りが急に薄暗くなり、いつの間にか泉の水中にいました。
目の前で、グリフォンの馬面が歯をむき出して笑っています。
「……いやだ! 人間になんか、なりたくない!」
 目の前の顔が今度は、グレンドリン伯爵の愛人ジョアンナの疲れた顔に変わりました。
「人間って、いいものよ。天使なんかより、ずっと……」
「うそつき! それなら、どうして地獄に落ちる人間がいるの。
泣いたり怒ったり、闘ったりしている、醜い存在じゃないの」
 そう言いながらも心のどこかで、フィズだけは違う、そう言っているのでした。
自分の口からでた大きなあぶくが広がり、
天井の小さな光に向かって上っていきました。
「人間って、なに……」

(続く60へ)

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えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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