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「天使の花はしご」(30)

除夜の鐘。百八つ鳴るのは煩悩の数。

さあ。暖かいコタツでお話しましょう。

 

(前のお話29へ)

長い廊下の先の部屋で、天使はおもわぬ光景を目にしました。

ギアド老人の仕事とは、狭間のこの地を照らすランプを、タマシイから作ることだったのです。

「わしは、また……ッ!」 

 ギアド老人のなげき苦しむ様子を見て、天使にはこれが老人の償いだとはっきりと分かりました。

かつて悪気のなかったキューピッドの小さな過ちが

罪のない天使を地獄に落としてしまったと同じように、

いま老人は、必死の呼びかけに耳を傾けようとはしなかった罪びとのタマシイを、

望みもしないのに自らの手で、永遠の牢獄に閉じ込めてしまったのでした。

 悪魔が壁に近寄り、硬いものを引っ掻くような音がし、それから老人に向かって言いました。

「おいッ、じじい! 目標まで、あと少しだ。さっさと達成しちまいなッ」

 その声にはあざけりと軽蔑と、わずかな憐憫が混じっているようでした。

でも老人に返事はなく、天使のいる場所からは、老人が打ちひしがれてひざまずく姿が、

薄明かりでぼんやり見えるだけです。

 老人がタマシイが再生の道を歩めるようにと必死に説得をすることは、

ランプ作成の目標達成とは、相反する行為でした。

それをこの老人は、何百年も続けてきたのです。

タマシイはたしかに気の毒だけど、おじいさんには早く償いを終えてもらいたいと、

天使は心から願いました。

 

 悪魔はタマシイをガラス玉からランプに移しかえると、天使のいるほうを向きました。

(見つかった?!)

 天使は慌てて身を引き、濡れた足元が、にちゃっと気味の悪い音を立てました。

悪魔はからっぽになったガラス玉を振りかぶり、こちらに投げつけてきました。

その瞬間、天使の脳裏には自分がランプにされる場面が思い浮かびました。

(やめてッ!!)

 ガラス玉はカシャッっと軽い音をたてて、チリチリと降り積もる音がしました。

「じじいッ、あれをよく見ろッ! お前が救えなかった魂の残骸だぞ、どうだ? いい眺めじゃねぇか」

 悪魔はあざけるようなわらい声を残し、部屋の向こうへ行ってしまいました。

その笑い声は、悪意をもって一斉に突き刺さってくる毒針のように、天使の体に鳥肌を立たせました。

天使は脚の震えがさらにひどくなって、自分の体が震える音が聞こえました。

 

 わらい声が遠のき、体の震えが収まると、天使はこのままそっと部屋に戻ろうと思いました。

言いつけを破って来てしまったコトよりも、

老人はきっと今の姿を誰にも見られたくないだろうと思ったからです。

 さっき自分が通ってきた廊下を振り返ると、そこには何十もの、

憐れなタマシイたちの姿がありました。

天使は部屋においてあった、もの言わぬランプを思いだしました。

彼らはこのような姿になっても、まだ何かを感じたり考えたりしているのでしょうか。

もしそうならば、あまりにも酷いことです。

 

 そのとき一つの灯りが、急に小さくなったり大きくなったりしたかと思うと、

アッっと思うまに消えてしまいました。

「やっと行ったか……」

 老人がいつの間にか後ろに立っていました。

地獄の先にまだ行くところがあるなんて、聞いたことがありません。

「どこに行ったの?」

「わしにも分からん。知りたいとも思わんよ、ただ……」

 老人はふるえる声で言いました。

「もう二度と、こんな世界には戻ってくるんじゃないぞ……!」

老人の目から、大粒の涙がこぼれ落ちました。

 そのとき突然、大きな声がしました。

「おおギアド! 今度のランプはなかなかよい出来だったぞ! ところで例の獲物はどうした」

地獄の番人グリモアの声です。

 

(次のお話31へ)

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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

「天使の花はしご」(29)

抹茶ケーキと紅茶、どうぞ。このケーキ、手作りをいただいたの。

ちょっとガッツリ系(笑)だけど、コクがあってとっても美味しいよ。

 

(前のお話28へ)

「あなたはどうしてここにいるの?」

 ランプは黙ったままです。

「あなたもつぐなっているの?」

 やはり何も言わないのを見て、天使は自分が可笑しくなりました。

(なんだ、声がしたと思ったのは、気のせいだったのね。

それに丸いものを見てすぐにタマシイと思ってしまうなんて。これはきっと、「天使病」だわ)

 ふふふっと笑うと、その息がランプに掛かって、ボッ……と炎が揺れました。

さっきの声は炎が燃えるときの音だったと思いなおすと、ランプをテーブルに戻し、

大きく伸びをしました。

 

 伸びをしたついでのように背中に力をいれてみました。

翼がゆっくり、それから段々早く羽ばたき、不意に体が浮かびあがり、

天使は幸せな気分で狭い部屋の中を三回輪をかいて飛びました。

「うーん。ハレイの泉のスープ、効いてるぅ~」

   

 元気が出ると、じっとしていられなくなるのは、天使も人間と同じです。

いつものようにドアをすり抜けようとして、あっと思いました。

目を凝らせば透けて見えるはずの側が見られないことに気付いたのです。

ここは地獄との境目。地上とは勝手が違うのです。

 天使は慎重にドアを押し開け、部屋の外へでました。

廊下はさらに薄暗く、壁には部屋にあったのと同じランプがところどころ掛けてありました。

遠くのほうから言い争うような声がきこえています。

くぐもっていて何を言っているか分かりませんが、

片方は老人の声で、もうひとりのほうは女性のようでした。

天使は声のするほうへ、進みました。 

 

 廊下の曲がり角まで来ると天使は床に降り立ち、壁からそっと覗き込みました。

足元が濡れて気持ちが悪いのは我慢です。

 

「お願い、アタシを消さないでッ! 認める、認めるよ!」

 その憐れで必死な叫び声は、ギアド老人が手にしているガラス玉からきこえました。

輝きを失ったタマシイを天使の目が見ることは出来ませんが、

その中には罪を認めたがらない頑固者のタマシイが入っているはずです。

ガラス玉には細長い紐のようなものがついていて、

それが老人の後ろにある、腰の高さほどの四角い箱につながり……

箱の上で動く小さくて黒いものを見つけた天使は、思わず叫び声をあげそうになり、

両手で口を押さえました。(あれが……悪魔!)

 

 悪魔のことは天使塾でもしっかり習っていましたが、本物を見るのはもちろん初めてです。

上半身が裸の皮膚は、遠目にも濡れて光っているのが分かり、

――なにで濡れているのかは考えないことにしました――

牛の汚れきった角のようなものが頭から突き出しているのが見えます。

本に載っていた挿絵より、何十倍も汚らわしい存在に思えました。

 天使はさっき飲んだものが口から飛び出しそうで、手をさらに強く押し当てました。

 

「では最後の一つ。マオという少年をたらしこんで親のほとんどの財産を盗ませ、

会社は倒産、ついには一家全員を自殺に追いやったことはどうじゃ、認めるか」

 老人の口調は冷静でしたが、声が震え、緊張しているのが分かりました。

「もういい加減にして……マオにはちゃんと分け前払ったし、

そもそも親を憎んでるアイツが言い出した計画なんだよ!

それに自殺したのはあいつらが弱かったからじゃないか……アタシは悪くない!

 タマシイが、子どものような声で訴えました。

さっきからずっと続いているシューという音がさらに大きく聞こえてきます。

「まだ分からぬのかッ、愚か者よッ、さっさと白状せねば永久追放の身となるぞッ!!」

「イヤだよ! アタシは絶対に悪くないんだッ!」

 声はさらに甲高くなり、蜂の唸りのブーンという音に似ていました。

「さあ早く! これが最後じゃ、認めるんじゃ! はやく!!」 

「アタシじゃ…………」

 ネズミが鳴いたような声がして、悪魔が喜びに身震いしたよう見えたのは、気のせいだったでしょうか。

急に静かになったかと思うと、あとは空気の漏れるシューシューという音だけが残りました。 

(消えた?!)

「うわああーッ!!」突然老人がわめきました。

「なぜ……ッ!! わしはまた認めさせることが出来なかったッ!!」

 

 圧縮装置はただの脅しだと思っていた天使は、

老人の嘆きを見て、その考えが間違いだったことを確信しました。

「じじい。さっさとよこしな」

 にやけたような声がして、ギアド老人が悪魔にガラス玉を手渡すと、

悪魔はそれに向かって何かまじないのような言葉を吐き掛けました。

するとそれは、オレンジ色の炎をたたえ始めました。

「これはなかなかいいぞ。グリモア様の部屋の明かりが一つ暗くなってたな。よしっ、早速交換だっ!」

 

 そうです。ランプはこうして作られていたのです。

 

(次のお話30へ)

本音トーク。書き始めると際限なく謎を作っちゃうのは、やめたいですー。

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「天使の花はしご」(28)

トマトジュースだと思って買ってきたのが、セロリ入り野菜ジュースだったときの、

ちょっとしたガッカリ感。でも体にいいと思って飲むよ。レモンを絞るのが重要なの。

でも今日はね、フレッシュバナナミルクをどうぞ。

ねぇ。ミキサーって、うるさいよね。

(前のお話27へ)

「どうやら頑固者のタマシイが来たようじゃ」

「わしはちょっと行ってくるわい。お前さんはそれを飲んで、この部屋で待っていなさい」

「う、うん……いってらっしゃい」

ギアド老人は、弓をそっと壁に掛けなおすと、

軽いとも重いともいえない足取りで部屋を出て行きました。

ひとりになった天使は、手渡されたお椀のスープをゆっくりと飲みながら、

弓を眺めました。

 

かつての輝きを失ってもなお、主人の手元に残っているそれは、

長年連れ添った相棒のような、または年老いた忠実なしもべのようでもあり、

ゆらゆらとした影をつくるその姿は、幸せそうでありながらどことなく寂しげに見えました。

その弓が矢を放つことは二度とないでしょう。

 

壁にゆらゆらと映る影を不思議な気持ちで眺めているうちに、

天使は突然ハッと緊張しました。

誰かの声が聞こえたような気がしたのです。

誰もいない部屋を見回すうちに、天使の目はテーブルの上のランプに釘付けになりました。

揺らめく炎の中に、うっすらと灰色の、丸いものが見えます。

天に昇るタマシイは透明感のある銀色で、その輝き方は均一ですが、

地獄に堕ちるものは輝きを失って天使の目には見えなくなります。

それが、炎のおかげでうっすらとその姿を見せていたのでした。

このタマシイはグリモア様の捌きによって、この炎を与えられたのでしょうか。

 

天使はベッドからテーブルの上に移動して、ちらちらと燃える姿を見つめ、

囁くように言いました。

「あなたはどうしてここにいるの?」

  

(次のお話29へ)

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ジャンル : 小説・文学

えめると王様。

 ココロのだーりんエメル王様。

いつも一緒にいてくれてありがとニャね。

 

 トイレに入っているとき、ドアのところで待っていてくれるのはいいけど、

ドア、閉められませんニャ……。

しかも真面目な顔して監視するの、やめてもらえませんかニャ?

恥ずかしいニャよ。

 

 お風呂に入っていると、ガラス越しに王様のりりしいお姿。

座って無言の「私をお入れなさい」アピールはいいけど、

いつからそこに居たのニャね? ビックリするよ?

 入ってきていきなり排水溝でおトイレは困りますニャ。

気分台無しですから……。

 ふたの上に乗って箱座り姿。むっふぅ。可愛いですニャね。

前足突っ込んで、お湯かき混ぜてくれるのニャな?

いい湯加減ニャよ。ありがと。

あっ! そのびしょびしょのまま廊下に出ニャイでーッ!

 

王様。もうちょっとこのままギュッとさせてにゃね。

えめるも牙、我慢するから。

あと10秒だけ……。

いたたたたっっ! だめだ、5秒でギヴ。あー腕に穴開いちゃった。

 

王様っ。ラヴっ。

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テーマ : ひとりごとのようなもの
ジャンル : 日記

「天使の花はしご」(27)

お部屋あったかーくして、外の雪景色を見ながらアイスを食べるのって、ちょっとした贅沢気分ね。

  はい。雪見大福。

(前のお話26へ)

「それ以来わしは悪魔の道具を使うことにした」

「道具といっても、見かけはタマシイを収めるガラス玉とほとんど同じじゃ。

お前さんも知ってのとおり、タマシイたちは体から離れたばかりで、

無防備な状態で居ることに慣れてはおらぬ。

無意識に、体の代わりになるモノを探しておるんじゃ。

そこへガラス玉をひとたび近づければ、まるで身を滅ぼす誘蛾灯を目指す蛾のように、

いともたやすく飛び込んでくるわい。

わしは素早く栓を閉め、まず手はじめに《ガラの泉》の話をしてやるんじゃが、

これは《再生の泉》としての本当の話じゃよ。

それからグリモア様の署名の入った書類を見ながら罪の確認をする。

ここで認めないことは分かっておるが、いちおう物事には、順序があるでのう」

 

 「それからどうするの?」

天使が口を挟みましたが、本当にそれを知りたいかどうか自分でも分かりませんでした。

「ポンプでガラス玉に空気をいれて圧縮するんじゃ」

天使が自分の体を両腕で抱くようにして縮こまりました。

「体がないので身体的な苦痛を感じるわけではないが、

送り込まれた空気に押され、タマシイは見掛けがどんどん小さくなっていく。

このままいくと、消えてなくなってしまうと思うんじゃな。

だれしも、再生の可能性を捨てたくはない。

最終的な無にたいする恐怖が、罪を認めさせるんじゃよ。

あるいは罪を背負ったままのタマシイとしてして葬り去られることに、わずかに残った良心が反抗するのか。

その両方かも知れんがのう。

いずれにせよ、助けを求める声が聞こえるまでに大して時間は掛からぬ。

そこでわしはもう一度罪を読み上げ、全てを認めたことを確かめたところで、圧を解いてやる。

あとは付き添いの悪魔にガラス玉ごと、手渡せばよい。

そしてわしは、次の頑固者のタマシイが来るまで、ここでこうして待っているというわけじゃ」

 

 そのとき、部屋にチリンチリンと鈴が響きました。

それはとても軽やかな音でしたが、重苦しい話に聞き入っていた天使は驚いてまた飛び上がり、

落ちかけたとき、自力で羽ばたきました。

ぎこちないながらも、なんとか浮かんでいます。

「飛べる!」

ギアド老人は当然という風にうなずくと、部屋の隅の大なべから澄んだ液体を汲んできました。

「さあ、これをゆっくり飲みながらここで待っていなさい。

どうやら頑固もののタマシイがきたようじゃ」

 

(次のお話28へ)

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ジャンル : 小説・文学

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えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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