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「天使の花はしご」(22)

う……んー……あ、ごめんね。夢見てたの。

優しくて悲しい夢。

えめるね。ホッとするカーペットって、暖かくて、安心できて……大好きなの。

///寝顔見てたでしょ。もうっ。

 

(前のお話21へ)

「私はミカエルの兄、グリモアだ」

地獄の番人、グリモア。

天国でその名を知らぬものはありません。

地獄に落ちるタマシイは、その前に彼の前で罪を洗いざらい白状させられて、

その重さによって苦しみの度合いを決められるのでした。

天使塾で習ったときは、まるで他人事のような気持ちで聞いていた天使ですが、

今こうして目の前に、その姿があるとなると、

話に聞いていた恐ろしい取調べの様子を思い出し、

天使は息も止まる思いがします。

グリモアの表情は逆光で陰になって見えませんでしたが、

白く長い豊かなひげをたくわえ、銀色の髪は豊かな曲線を描いているのがわかります。

大柄でしなやかな体つきは、

生まれたばかりの天使たちを抱き上げる、優しいミカエル様を思い出させました。

(似ている、でも違う。ぜんぜん違う!……あっ!!)

突然、何かが天使の眼に突き刺さってきました。

それは眼から入り込んでじわじわと全身に広がっていきます。

ひとにらみするだけで全ての罪を、文字通りはらわたをえぐるように見極めてしまう、

情け容赦のないグリモアの眼でした。

天使は全身が硬直し、言いようのない不快感に包まれました。

(寒いっ?!)

天使はこのとき初めて、恐怖というものを感じたのです。

もしこのとき、天使にわずかでも罪の意識があったなら、

その心臓はたちまちに凍りつき、二度と希望の光を見出すことはなかったでしょう。

 

グリモアの視線がはずれ、天使が息を吸い込むと、背中に鈍い痛みが走りました。

「堕天使ではないのなら、何をしに来た」

「だっ?!……だだだ……!!」

天使は必死にかぶりを振ろうとしましたが、わずかに身体をゆすっただけでした。

「なぜガラの泉にいたのか、答えよ」

「ガアのいういっ?!」

天使はろれつの回らない声を上げました。

ガラの泉というのは、ハレイの泉と対を成すものであり、

かたやハレイの泉が命を生み出すものならば、かたやガラの泉は

地獄でつぐないを終えた命を最終的に消し去るものであると、天使塾で習ってきました。

別名、タマシイの墓場。 

(そんな恐ろしい場所が、どうしてフィズの庭に……?)

 

本来なら見えるはずのない天使の姿が見えてしまう、花屋の娘フィズ。

その彼女の庭にある不思議なめぐみの井戸が、

事もあろうに地獄に落ちたタマシイの墓場だったというのだから驚くのも当然です。

井戸が天国につながっているかも知れないというフィズの願いは、

最悪の形ではずれていたのです。

命の溶け込んだ水が、あの美しい花々を咲かせていたなんて……。

そうとは知らずにただの好奇心から、自ら井戸に飛び込んだりして、

自分はなんて馬鹿な事をしたのだろうと天使は思いました。

(あたし、どうなるの? それにフィズは?

いくら本当の事を知らないとはいえ、命の秘密を利用していることには違いないわ

どうしたらいいのっ?)

天使はギアド老人のほうを振り向きましたが、今ここでそれを確かめることは不可能でした。

「えんえんわあらないお(全然分からないよ)」

独り言のクセで、つい声がでてしまいました。

 グリモアの眼が天使を一瞥しました。

「その言葉にうそはない。どうやらお前は間違ってここに来たようだ。傷が治ったらさっさと帰れ」

そう言うなりきびすを返して、グリモアは部屋を出て行きました。

ドアがばたんと音を立ててしまった途端、天使の顔がくちゃくちゃになりました。ホッとしたんです。

 

「いやぁ、実に上手くやったもんじゃ。驚いたわい」

「え?あにを?」

その返事のかわりに、ギアド老人の顔には労わるような笑みが浮かんでいました。

「さあ、全部飲んでしまいなさい。傷の治りも早くなる」

天使が差し出された器を両手で受け取り、スープを一口のむとそれまでの寒気がすっと消え、

さらに呑み込むごとに、背中の痛みが癒えていきました。

聞きたいことが沢山ありすぎて、

天使はごちゃごちゃの頭を両手でくちゃくちゃっとかきました。

「ねぇ、ギアドおじいさん……」

「ああ。聞きたいんじゃろう? ガラの泉のことを」

 

 

(次のお話23へ)

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ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

>>チャンさーん

あいやー、どきどきした? してくれたのっ?
んー。うれすい。^>ω<^
ありがとニャねっ。
続きもかいたニャ。
しばらくは物語り中心にしよッかななんて、思ったこと言うとね、
えめるの中の天邪鬼な心が違うことさせようと企み始めるからいわニャイけど。
かけたらかくニャ。この程度。にゃはー。

No title

ふうむ・・・
はじめましてこんにちは
不思議な井戸と助かった天使
えめるさま
どきどきしましたよ
この先は・・・???

>>いき♂さーん

ハッ?! そ、そうだったのかニャッ!! 
さすがいき♂さん、えめるちーっとも気が付かなかった^・▽・^あ??
いいこと教えてくれて、ありがとニャねーっ。むっふ。
ナンつー作者だ……と、自分で突っ込んどくからニャねっ。うにゃ。

No title

な、なんと!
フィズが天使を見ることができるのは単なる偶然じゃなかったのか!
やるな、えめるん。もっと読みたいニャ!w
sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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