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「天使の花はしご」(23)

コタツに入っておみかんどうぞ。小粒が好きよ。

 

(前のお話22へ)

フィズの庭の井戸の秘密を探りに、水に入った天使は、

地獄の番人グリモアに堕天使と間違えられ

地獄と地上の境目につれてこられました。

ギアドという親切な老人に介抱してもらいます。

そこで天使は、その井戸が「ガラの泉」である事を知ったのでした。

 

「聞きたいんじゃろう? ガラの泉のことを」

ギアド老人は、傷んだ翼に負担が掛からないように天使をうつぶせに寝かせると、

粗末な椅子に座りなおしました。

「お前さんがどこから迷い込んできたか、わしにはわかっておる。

あの娘の家の井戸に飛び込んだ、そうじゃろ?」

「おじいさん! フィズを知っているのっ?!」

天使はフィズの落ち込んだ様子を思い出すと、傷の痛みも忘れて起き上がろうとし、

背中の痛みでまたバタンとうつぶせにもどりました。

「おっと、動くと傷の直りが遅くなる。まあ、落着きなさい」

「ねえっ今何時? 早く帰らないとフィズが心配するの!」

老人はじたばたする天使を軽くベッドに押さえつけるようにしながら言いました。

「今そのからだで、水中を泳ぐのは無理じゃ。あの娘のことが気になるのなら、傷を一刻も早く治すことじゃな。

それにここでは、時間の流れが地上より緩やかになっておる。

お前さんが井戸の飛び込んでから、まだ10分と経ってはおらんはずじゃ。

分かったら安心して、しばらく動かず、ハレイの泉のスープの効果を信じていなさい」

それから老人は、独り言のようにつぶやきました。

「そうか、あのこはフィズというのか……いい名前じゃ」

ギアド老人は、タマシイのランプを背に、静かな口調で話し始めました。

 + + +

あの娘のことは、生まれる前から知っておるぞ。

最近なにか哀しいことがあったようじゃな。

彼女が井戸に近付くたびに、大切なものを失った悲しみがここまで伝わってくるんじゃ。

 

ガラの泉はいろいろなチカラを持っておる。

そのひとつは、天使塾で習ってきただろうが、つぐない終えた魂を消滅させるチカラじゃ。

天国では今でも、《タマシイの墓場》と呼んでおるらしいのう。

墓場とは、よく言ったもんだが、馬鹿げた名前だとワシは思うておる。

と言うのも、あの井戸と同じような場所は、他にもいくつかあってのう、

その水で、病気や怪我が治ることも珍しくないんじゃが、

やれ聖者の涙で出来た湖だとか、その昔神様に仕えたリュウが住んでおるとか、

人間どもはそのチカラに勝手な理由をつけたがる。人間とは勝手なものよ。 

 

少し地獄について話をしておこうかのう。

地獄に落ちたタマシイたちは、そりゃあ辛いつらい思いをする。

あれはワシがここに送り込まれて間もなくのことじゃ。

独占欲のために恋人を殺し自らも命を絶ったある男が、地獄に送られた。

死ねば愛する者の肉体を他の者にとられる心配はなくなるからのう。

これで永遠に自分のものになったと、さぞかし喜んだことじゃろう。

ところが、この男には大きな誤算があった。タマシイの存在を忘れておったんじゃ。

死んですぐに、罪のない女のタマシイは天使の手によって天国へと旅立ち、

罪を犯した男のタマシイは悪魔によってここに運ばれてきた。

グリモア様の裁きは、男の執着心が消えるまで二人の魂は出会えぬ、というものじゃった。

男は部屋を一つ与えられそこで罪を償うのだが、

壁に大きな画面があってのう。そこに彼女の現在が映し出されるのじゃ。

生まれ変わって成長し、誰かとであって恋をして、結婚して幸せのうちにいつか死ぬ。

それを見続けなければならん。

目を背けたくてもそれを許されず、

気が狂いそうなほどの嫉妬に駆られても狂うことができず、

唯一許されるのは、夢を見ない眠りの時間だけじゃ。

いつ果てるとも分からぬ苦役に、ひたすら耐えることしか出来ぬのじゃ。

ある時男は、自分の指を両の目に何度も突き立ておった。

これでもう女が他の男によって幸せになるのを、見なくてすむと思ったんじゃろうが、

肉体が無い以上、そんなことは何の役にも立たぬ。

地獄とはそんな甘いものではない。

あれから何百年も経つが、今はただ床に転がってじっと動かず、

おそらくは自分自身何を思っているのかも分からぬ状態で、女の幸せを見ているんじゃよ。

それでもまだ、罪は許されておらぬ。

長年ここでグリモア様手伝いをしとるわしでも、ときどき眼を背けたくなることがあるんじゃよ。

 

(次のお話24へ)

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ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

>>心温ちゃーん

 二度ね前に本を読むと夢を見ませんか。

お仕置きって、こういう蛇の生殺しが一番きついと思ったニャねー。
だって、大好きな人が、目の前でウニャニャだもんねー。
あー、イヤだ。
そのうち自分の心を殺してしまうんでしょうニャ。
何も感じないようにしてしまったらいい。でもそれじゃ、つぐないとしてダメなのか?
えめるには難しくて分からんニャ。グリモア様が決めることニャなー。

心温ちゃんは、ココアがおすき~。えめるもだよっ。

No title

ふむむ・・・・おじいちゃんの話深いなぁ~

「気が狂いそうなほどの嫉妬に駆られても狂うことができず」ってどんな感じにゃんやろ。すっごいもどかしそう・・・ひぃ~

とりあえずココア飲みながらにょーんと読むべきだった。2度寝する前に読むんじゃなかったのさ~( ・ω・)

また読めばいいか☆

sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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