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「天使の花はしご」(24)

今日はきんつばとお薄でどうぞ。抹茶は薄くしてあるから苦くないわよ。

このきんつば、そこで寝ているお姉さんにいただいたの。気持ちよさそうだから、そのままそっとしといて上げましょうね。

でももし、いびきかいたら、軽くつついてやってね。

 

ギアド老人のお話が続いています。(前のお話23へ)

老人が一息ついたところで、天使が訪ねました。

「それじゃ、おじいさんは何百年も前からここに居るの?」

「ああ、そうじゃ」

「いつまで居るの? その前は何をしていたの?」

老人は質問には答えませんでした。

「そうじゃな、もう一つだけ、地獄に落ちた堕天使の話をしてやろう」

堕天使と聞いてビクッとした天使でしたが、

――なにせ天使自身、堕天使に間違われてここにつれてこられたのですから――

老人の言い方があんまり優しいので、思わずうつぶせのまま老人のほうに身を乗り出しました。

 

+ + +

その堕天使も、ここにくる前はお前さんと同じように《タマシイの仕事》をしておった。

そやつはタマシイを見つけ出すことににおいて、誰にも真似できない技量をもっておってな、

どんなに弱々しいタマシイの光も、たちどころに見つけ出せるのが自慢じゃった。

それがどんなに難しいことか、お前さんなら分かるじゃろう。

それでミカエル様も特別に目をかけられ、

いつかは自分の右腕としての地位を任せてもいいとまで、仰られたそうじゃ。

 

ところがある日のこと、不運がおきた。

そやつがタマシイの仕事のため地上に降りてくるのと時を同じくして、

その近くでもうひとり、キューピッドが《情熱の矢》を射る準備をしておった。

そのキューピッドはそのとき、やっと見つけた一人の男に狙いを付けておったんじゃがな、

矢を射る瞬間、それまで雲に隠れていた太陽が顔を出し、目がくらんだキューピッドの矢はわずかに狙いが外れた。

その矢が、花はしごにつかまっていた天使の胸を、射抜いてしまったんじゃ。

射抜かれた天使の身体はあっという間に形を変えて人間の男の姿になると、

花はしごが重さに耐え切れずに、男は地面に向かってまっさかさまに落ちていった。

 

キューピッドは慌てて地上に向かうと、

男はすでに植え込みの上に落ちていて、どうやらかすり傷だけですんだようじゃった。

男に声をかけ、からだをあちこち確かめするうち、彼には自分の事がまったく見えていないことが分かった。

男は身も心も、清らかでたくましく美しい、人間の青年そのものになっておったのじゃった。

一たび《情熱の矢》に射抜かれた身体を元に戻す方法などあろうはずもなく、

ぼうっとしている男のそばで、刻一刻と運命のときが近付くのを待つしかできんかったのじゃ。

そして人間の姿にされてしまった天使は、通りかかった女とその場で恋に落ち、

そのすぐ隣を、もうひとりの男が無関心な顔で通り過ぎていった。

  

元天使の男は、落ちたときのショックで全ての記憶を失くしてしまっておった。

気の毒に思った女が家に連れ帰ると、そのまま女の元で暮らすようになったんじゃが、

それを罪だと、誰が言えよう。

そのまま人間として暮らさせてやってもよいではないかという意見も多数上がった。

実際にそういう前例が、まったくなかったとは言えないからのう。

しかし運の悪いことは重なるものでのう。

 

あのとき代わりの天使がすぐに彼の仕事をひきついだが、時すでに遅く、

タマシイが三つも、悪魔に持ち去られるという事態が起きてしまっていたんじゃよ。

もともとそのタマシイは光が弱く難しい仕事だったためにそやつに任されたものだが、

その責任が如何に重いか、お前さんならよく分かるじゃろう。

その罪は他のものへの示しとしても、とうてい見過ごされるべきものではなかった。

 

ある日突然、男は女の前から姿を消し、そのまま行方不明になったとされておるが、

 本当は悪魔の手によってここに連れて来られ、女には、新しい運命が与えられたというわけじゃ。

もともと本人が災いを招いたわけではなかったし、何よりも記憶を失っていることが考慮されて、

罪はその場で許され、すぐさまガラの泉行きを命じられた。

本人にしてみれば、何のことかまったく訳がからないので、それはかわいそうな光景じゃった……。

わしは今でも、そのタマシイの最後を覚えておる。

ガラの泉に消えていくタマシイは、最初こそ怯えて震えておったが、

まもなく大いなる命のチカラに癒されて、溶けながらいつまでも、美しい輝きを放っておったよ。

そんな彼を、堕天使と呼んでいいのかどうかわしには分からんのじゃ。

 

 

「ねえおじいさん。キューピッドはどんな罰を受けたの?」

「キューピッドはお咎め無しじゃった」

「どうして? だって、その矢のせいで、不幸が始まったんじゃないの。

罪のないタマシイが地獄に落とされたんじゃないの」

 

(次のお話25へ)

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>>拳士さーん

  年末の忙しい中お越しいただきまして、感謝なのニャーッ!
イヴ? そりゃあ決まってるニャ。
えーとえーと……?……あ??

そ、そんなこと聞いたらアカンっ!

(答え。エメル王様ネコのご飯の世話とネコ砂掃除)

No title

えめるさん、こんにちわぁ♪

ちょこっとバタバタしててご無沙汰してましたぁ!
寒いのでなかなかコタツから出れない拳士です^^
明日はイヴですがどうお過ごしに??
素敵なイヴを(^O^)/

ではでは、またゆっくり来ますにゃ♪
お邪魔しましたぁ~♪
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えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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