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「天使の花はしご」(39)

(前のお話38へ) (目次)

 もがくほどに水面は遠ざかり、天使は反射的に、背中に手を伸ばしました。

しかし新鮮な空気を供給してくれるはずの純白の羽根は、もうどこにもないのです。

それに気が付いた時、これまでにないショックが、天使の心を襲いました。

心の中の大事な何かがすっぱりと切り取られてしまったような、

もう自分には何も残されていないような、誰も自分を知る人がいなくなってしまったような……。

そうです、天使は生まれて初めての、孤独を感じたのでした。

 間もなくあまりの肉体的な苦しさに、全身の力が抜けたとき、

自然と体が浮き上がりました。

 烈しく咳き込みながら、なんだ、と天使は思いました。

悪魔だって、無理をしなければ水に浮くんだ。

でも、自由に飛べる翼が無い。情熱と誇りを感じる天使のお仕事も、

天国に戻って大好きな花の世話をすることも、もうできなくなってしまった、だけど――

(フィズにもう会えない……!)

 そのことが何よりも心を傷めつけるのでした。

 天使はあお向けに水面に浮かぶと、灰色の天井をぼうっと眺めました。

夢でみた、フィズと腕を組む幸せな自分が思い浮かびましたが、

今となってはそれも胸を苦しくさせるだけ。

人間だろうと悪魔だろうと、翼がない以上、泳いで地上に戻ることは不可能です。

からだが変化してしまった今となっては、急ぐ必要はもうなくなったのです。

 

 威厳に満ちた声がしました。

「お前。何をしている」 グリモアです。

 しかし天使は返事をしません。あんなに恐れていたグリモアがすぐそばに居るというのに、

相変わらず水面から天井を見ているだけです。

「そこで何をしているのだ」少し語気が強くなりました。

 天使はやっと思い出したというように声のするほうに顔を傾けた拍子に、

水が鼻に入り再び咳き込みました。

からだが沈みこみまた浮かび上がると、感情のない目でグリモアを見上げました。

「ここには人間なぞ必要ない」冷たい瞳が言い放ちました。

「え、人間て……」

「おまえは人間だ。ここに居ることはまかりならぬ!」

 天使はそういわれても、まだ納得できませんでした。

何といっても、からだの真ん中には鬼の角が生えているんですから。

「さっさとここからでて行くがよい! 出でよグリフォン!」

 グリモアが右手を高く挙げると、突然ごうという音とともに水面が大きく盛り上がり、

何者かが天使を天辺まで押し上げました。

背中を押す力が急になくなったと思ったら、今度は背中から地面に投げ出されました。

何という衝撃でしょう、息が詰まって声も出ません。

人間になるとは即ち、神のご加護から外れるということでもあるのでした。

 

(次のお話40へ)

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テーマ : 自作連載ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

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おへんじー

>>チャンさーん

いらっはいっ。あいあーい!
えめるちょこっと頑張って出してみましたのよ。

いい年の大人が恥ずかしがってちゃイケマへんので、
この先はもっと出しますのよっ!ひえーっ!
慣れない下手な文でなれないことを書いたら、あにゃたっ!!
どうなるの? 
ものごっつつまんないか、やたらすごくなるかのどっちかでしょ?
どうするよ……?!
詰まんないほうに転ぶのは、書く者として非常に悔しいけど
えめるの理性は地味だからニャー(苦笑)

No title

アカン(;~∧~;)ヾ
鬼の角が目に刺さる (笑)
はにかみえめるさまも頑張りましたね~♪
偉いエライ~♪
褒めてとらす+:。☆゜(*´∀`)ノ゜☆:。+゜

天辺はてっぺんのことですね
てんぺんって読んじゃった (笑)
sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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