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「天使の花はしご」(46)

(前のお話45へ) (モクジ君)

 天使は効果の薄くなった羽根をくわえなおし、

横目でちらりとグリフォンを見ました。グリフォンの目玉もこっちを見ていました。

グリフォンは天使の視線に気がつき、くちびるをめくり上げてあざ笑うような表情になると、

水を蹴ってすっと天使に近付きました。そして頭の中に呼びかけてきました。

『それが最後の一枚ね。どうするの?』

 天使がそれを無視して顔を上に向けなおしました。

すると今度は前に進み出てその血走った目を後ろ向きに回転させて見てきます。

『羽根を下さいと、その口で言ったらいいわ。さあ、言ってみなさいよ

 グリフォンの口調が挑戦的に変わりました。

天使は、胸の中にむくむくと沸き起こった不快なもののせいで、

うっかり叫びだしたい気持ちになりました。

それは憎しみと嫌悪の入り混じった、人間らしい感情でした。

天使は、羽根の軸がくちびるに食い込むほどぎゅっと引き締め、耐えました。

グリモアは泉での最後のとき天使に、言葉を言ってはいけないと教えてくれたはずです。

今はそれを信じるしかないのです。

 二人はまた黙り込みました。

 

 小さな点だった地上の光は、なんとか円形が感じられる大きさになりました。

すると水中にうっすら光がさしてきて、その透明度とあたりの空虚さを見せ付けます。

確実に地上に近付いている、そのことが何よりも、天使に力を与えてくれるのでした。

天使はまた羽根をくわえなおし、

泉のほとりでグリモアが言っていたことを思いだしていました。

《――さあ、これを腰につけよ》

 そういって渡された腰布は、鋭い爪に剥ぎ取られて何所かにいってしまいました。

《グリフォン、お前にこの人間を預ける。そして地上に向かうのだ――》

(でもグリモア様、地上はまだあんなに遠いです。それに――)

 なぜグリモアはこんな恐ろしい生き物に自分を託したのだろうと思うと、

冷徹な瞳のグリモアが恨めしく、また地獄の番人の真のおそろしさを

身をもって知ったような気がするのでした。

『そう、グリモア様は恐ろしいお方よ。あなたを私の獲物として下さったのだから』

(――獲物!!)

 ここでまたその言葉を聞くことになるとは! その恐ろしい言葉は、

悪魔の手伝いをさせられる存在にだけ使われると思っていたのに。

(ではグリモア様は、わたしを地上に帰すおつもりはなかったとでもいうの?!

ギアドおじいさんは、私を助けようとしてガラの泉を飲むように仕向けたんじゃなかったの?!)

 天使は大きく見開いた目でグリフォンを見ました。

グリフォンが今度はからだがくっ付きそうなほど近くにすり寄ってきました。

『わかったでしょう? あなたは私のモノだってことが。フフフ。

地上はまだまだ遠いわよ。ほうら、そろそろ羽根の空気がきれる頃だわ。

さあ、その口を動かして私にお願いしなさい。どうか助けて下さいって。

羽根なんかあなたが欲しいだけ、いくらだってあげるわ。

そしてこれから私と一緒に暮らすのよ。ねえ、いい考えだと思わない?』

 天使はショックと息苦しさで、グリフォンの鼻から吐き出される泡を避けることも忘れていました。

泡をかぶってぼうっとした頭が再び幻影を見はじめます。

それでもまだ正気の部分が必死に何かを思い出そうとしているのですが、

目を強くつぶっても頭をどんなに振っても、フィズの幻が霧のように見るべきものを覆い隠し、

それまでの考えが途切れてしまうのでした。

(ああフィズ、苦しいよ――)

『ええ、私だって助けてあげたい、だから言って』

(助けて――)

『口に出せばすぐに助けられる、だからお願いよ――』

 ぴったり寄り添った二つの影は、そのまま静かに上昇していきました。 

 

(次のお話47へ)

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テーマ : 自作連載ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

おへんじー

>>チャンさーん

はい。私も早く地上に戻りたいんです。
次回でメドがつくような気がしています。
……って言うとね、えめるの天邪鬼な深層心理が続けさせようとするの。
くそーっ!そんなのに負けるもんかっ、話、進めてやるニャしっ!

だからもちっと待っててね。

てんま

てんま
てんまでとどけ
てんまどは、まだ??
てんまに命を預けるの??
てんまつは・・・?
早くおせえて(^^)√

おへんじー

>>んぐたーん

あいあーい! いつもありがとうでーすっ!

水中の場面では心情の揺れるような変化を書いてみたかったんです。
でもどこまで細かく書いたらいいかっつーか、
これまた加減が難しいことに気がつきました。
話をさっさと進めるべきときと、それとは反対に心情を細かく書くべきところと。
その兼ね合いがきちんとあって初めて、物語にリズム感が生まれるんですね。
って、気が付いたから、マアいい練習になって良かったかな。たはっ^>▽<^

あ。読んでくれたの?あの独り言。あーい(照)
まったく寂しいネコなんだけどね、いいのよ。
そりゃあさ、オニヨメさんとんぐたんのような奥の深ーい関係って、
ちょっと羨ましいけど、
えめるはこのままじゃないと頑張れないから。不器用だからニャ。
いつもコメント、とっても励まされているよ。どもね。

だー…試練とか意地悪ではなく、やっぱり獲物だったのか…(汗)

毎度同じことをコメントしてるかもしれないけど、細かい描写がホント見事。
いや、毎回でもイイや。
『羽根の軸が唇に』って処なんて、ゾワゾワ。

続き頑張ってね!(・∀・)コメント欄の独り言も読んだでよー!(◎∀◎)
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えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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