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「天使の花はしご」(48)

(前のお話47へ) (モクジ君)

 + + +

  若者は花園の中で裸で眠っているようでした。

その頬を太陽が温かく照らし、どこかでミツバチの羽音がしています。

若者はまぶしさを感じて目を覚ましました。

「んー、よく寝たーッ!」

 寝転んだまま伸びをし、動かなくなりました。

「あれ……ここ、どこ?」

 見えるのは、細長く生い茂るみどりの茎と優しい色合いの花々、そして青い空。

薄い花びらが風にそっと揺れるのを見ていると、なんだかとても穏やかな気持ちです。

 そのとき物音がして、少しはなれたところから声がきこえました。

「ジュリ、まだ庭にいるの? 水遣りはもう終わった?」

(誰?)

 若者は初めて聞いたはずの声に、奇妙な懐かしさを感じました。

 若者は背中にちくりとした刺激を感じ、思わず横向きに背を丸めたときに初めて、自分の体を見ました。

青白いほど澄んだ肌色と、足の付け根の突起物――何も身につけていないことに気付きました。

若者はなぜか見つかってはいけないような気がして、息をころしました。

「ジュリッたら、隠れんぼのつもりね?」

 娘の言うジュリという名前に、何となく心躍る響きを感じます。

柔らかい地面を踏む音がしばらくのあいだ、若者の前を行ったりきたりしました。

「ほぅら、見つけたっ」

 とつぜん若者の視界に娘の笑顔が現れたかと思うとすぐに引っ込み、怯えた声がしました。

「あ、あ、あなた誰なの?! ここで何しているの?!」

 そう聞かれても、若者は何も返事が出来ません。

彼は、自分がかつて天使だったことも、地獄との境の地から逃れてきたことも忘れていました。

水中から飛び出し地面に叩きつけられたショックから――あるいはグリフォンの魔力によって、

すっかり記憶を失ってしまったのでした。 

 若者が上半身を起こしてみると、娘が井戸の淵に手をかけて青ざめた顔で立っていました。

「と、とにかく、服を着てください!」

 若者は何か落ちていないか見回しましたが、服など見つかるはずはありません。

水色のワンピースは人間の体になるときに裂けてしまい、

グリモアがくれた腰布はグリフォンによって奪われていました。

「ここはどこですか? わたしは誰なんだろう……わからない。何も思い出せないの」

 フィズは、自分が掛けていたエプロンをはずして若者に投げてよこしました。

「それをつけて。あなた、どこから庭に入り込んだの?」

「なにも……わからないの」

 フィズは困りました。そして思い出したように急に立ち上がり庭を見渡し、

誰もいないのを確かめると、つぶやきました。

「どこに行っちゃたんだろ、ジュリ……」

 目の前にいるのがそのジュリだとは、気付くはずがありませんでした。

 

(次のお話49へ)

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テーマ : 自作連載ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

おへんじでにゃす

>>チャンさーん

ねえねえ。いつになったらこのお話、終わるのかニャーと自分に聞いてみたい。
なんかね、ほんの2回前まで、地上に出たらフィズと幸せになってさっさと終わると思っていたのよ。
ところがどっこいよ。
グリフォンの奴があんななぞめいた顔したから、それを書かなくちゃならなくなりました。
矛盾も気が付いたし。
どするのどするのっ。泣く泣く泣く。←最近こればっか

じ、次回も、どぞ、お、おたのしみに……^;+;^

No title

物語りは新しいステージへ
ジュリとフィズの物語り
期待していますね~♪
sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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