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「天使の花はしご」(51)

(前のお話50へ) (モクジ君)

 「グリフォン、お前じゃない――」

 若者は、醜いものをみたように顔をゆがめ、搾り出すように言ったかと思うと、

ぐったりとフィズにもたれかかりました。そのとき若者の汗がフッと匂い、

フィズに、かつてガルドと丘の上で並んで座っていたときのことを思い出させました。

 あの時もこんなふうに近くに互いの顔を寄せ合って、

二人は、春先の爽やかな空気に包まれながら、

やがて突然の別れがやってくるとは知りもせず、たしかに幸せだったのです。

フィズは恋人ガルドの頼もしい腕にからだを預けて、

空を行く雲さえも自分たちを祝福してくれると感じていたのでした。

おもいがけず蘇った鮮やかな記憶。天国へと旅立ってしまったフィアンセを想い、

フィズは溢れ出る涙もそのままに、ガルドと若者の姿を重ねてみるのでした。

 

 若者は時折り夢でうなされるのか眉間にしわを寄せていましたが、

さいわい血清の効果は切れておらず、やがて若者の清潔な頬に赤みが差してきました。

(良かった、もう大丈夫)

 午後の庭の中でミツバチの羽音が眠気を誘います。

若者の頭をひざの上に移すと、ガルドの死から今日までほとんど

眠れず過ごしたフィズは、疲れが出たのかいつの間にか眠りに落ちていました。

夢の中にでてきたガルドは、思い出の丘の上で、すぐそばに居るのに手を伸ばしても触れず、

話す声はまるで遠くでしゃべっている様で彼女の耳に届かないのです。

眠るフィズの頬に、また新たな涙の流れができていました。

 

 陽が傾き、フィズは、肌寒さを感じて目を覚ましました。

哀しい夢から覚めてホッとするより先に隣で若者がいることに驚き、

すぐにそうだったと思い出すと、彼の額に手を当てて熱が下がっているのを確かめました。

 空気が乾燥しているこの季節は、太陽が沈むと急に冷え込んできます。

昼間は汗ばむ陽気だったのに、今はもう、半そでから出ている腕に鳥肌が立っていました。

このままでは風邪を引いてしまうと思ったフィズは、若者のからだを揺さぶりました。

「ねえ、起きてください、ねえ!」

 若者は小さくうなってからだを丸めると、寝言を言いました。

「フィズもうすぐ……」

 フィズは自分の名を呼ばれて驚き、叫びそうになりました。

彼との遣り取りを思い返してみましたが、突然裸で人の庭に立ち入って来るような者に、

自分から名乗るとは思えませんでした。

(いったいこの人は誰なの?)

 そのとき若者が目を開けフィズを見ました。

「……あ、フィズ、ただいま。遅くなっちゃってごめんね」

 

(次のお話52へ)

本音。どう始末つけろっていうのこの展開……。

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テーマ : 自作連載ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

おへんじにゃーす

>>彼岸花さーん

いらっはーい。そうですにゃー。いよいよって感じでスニャ。
思いつかないッつーか、書き始めないと何も浮かばないッつーか。
また夜、画面の前に座ってみるかニャ。
あーい。もうしばらく、おまちくだされニャね。

おへんじでーす

>>チャンさーん

これはじつは毒グモに刺されてうなされた場面から始まってるのニャよ。
人間になって、フィズの庭に倒れていたんだけど、
気が付いたら記憶を失っていたの。ところが、ゴク雲に指されたショックだかなんだか知らないけど、
目を覚ましたら記憶が戻っていたということなんです。

どうなるのかニャ。ほんとにさ。お待ちくだされニャね。

続き読みたい!

お話が佳境に入ってきましたね。
続きのんびり待ってるニャ~。

No title

あ、フィズ、ただいま。遅くなっちゃってごめんね///
⇒ どへっ
物語りはどんどん進んで、井戸からついに生還!?
ん!!誰だ!?
慌てるフィズと、作者 (笑)

sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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