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【山の宿】1

 タクシーを降りた途端、冷たい風が体を取り巻き、

俺はコートの襟をかき合わせた。

近くに電灯はなく、空は晴れているはずなのに

背の高い木々に邪魔され星もみえない。

 秘境の宿というよりも、寂れきった安宿といった方が良さそうだ。

 納品した機械のトラブル解決に、時間がかかってしまった俺は、

明日の朝一番で戻ると会社に伝え、

こちらで一泊することにした。タクシーの運転手に聞いたところ、

宿といえるのはここ一件しかないという。

そんなことでもなければ、こんな場所に来ることは無かったが、

今夜一晩だけの我慢だと思った。

 

 坂道を下っていくタクシーのテールランプを見送り、

玄関の引き戸を開けた。

人の気配は無かく、外よりも寒さを感じた。

 普通の家の玄関を広くしたようなつくりで、

正面に古びた応接セットが置いてある。

小さな電灯がテーブを照らし、周囲に憂鬱な陰をつくっていた。

タクシーを返してしまったことを後悔し、思わず小さくした打ちした。

「いらっしゃいませ」

 すぐそばから声が聞こえ、俺は心臓が飛び上がりそうなほど驚いた。

とすぐに廊下の暗闇から、小さな老婆がとことこと出てきた。

顔の真ん中に大きな疣が目立った。

 さっきまでまるで足音が聞こえなかったが、ずっとそこにいたのだろうか。

今の舌打ちも聞かれたに違いないと思った。

息遣いさえ聞こえそうなほど近い場所で、

さっきからずっと俺の顔を見上げていたというのか。

いや、風の音にかき消されて気がつかなかっただけだろう。



 俺は仕事用の笑顔を取り繕った。

「こんばんは。さきほど電話したものです」 

「はい、お食事と宿泊でございましたね」

 しわがれた声で、私を見上げてニヤッと笑った。

鼻の横の醜い疣が、まるで別の小さな生きもののように蠢いた。



「お部屋はこちらでございます」 

 老婆のあとをついて歩いた。真っ暗だと思っていたが、

月が昇ったのか、うっすらと足下が見える。

明かりのついている部屋はなかった。もう眠りについてしまったのだろうか。

それにして静か過ぎるし、何より寒い。

暖房も使われていないのかも知れない。どうやら客は俺一人のようだ。

平日だしこんな人里はなれた場所にあるのだから当然だろうが、

こんなふうでやっていけるものなのだろうか。


 通された一番奥の部屋は、暖房で暖かかった。

老婆はお茶を入れてすぐに引っ込んだが、廊下を歩く足音がしないのに気が付いて、おやと思った。

さっき自分がぎしぎしと床板を鳴らして歩いてきたが。

そうか、あの老女は体重が軽いからなのだろう。

 

【次へ】

気晴らしにこんなの書きました。

続きものですが、決して長編じゃないです。

これは元のお話があるので、

完全オリジナルじゃないです。

多分、高校のときに読んだ、阿刀田高?かなぁ……?

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えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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