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「天使の花はしご」(57)

(前のお話56へ) (モクジ君)

「奥様。お連れいたしました」

「今行きます」

 部屋の奥から声がして、ドレスに身を包んだ女性が付き添い人に体を支えられて現れました。

流産して間もないせいか青白い顔色でしたが、

それが却って彼女の儚げな美しさを際立たせました。 

どこかフィズを思わせるのは、大切な存在を亡くした哀しみが同じだからでしょうか。

「私はこの家の主、ジョアンナです。どうぞお掛けになってください」

 そう言って中年の女性に助けられながらソファーに腰掛け、

微笑んだ彼女の顔に若々しさが蘇りました。

「窓から外を眺めていたらあなたの姿が目に入りましたの。

何か思いつめたご様子が気になって、つい声を掛けてしまいました。ご迷惑でしたかしら」

 ジュリはなんと答えていいのか分からずにジョアンナの顔を見ました。

豊かな金髪を大きく結い上げた、流行の髪型がとてもよく似合っています。

フィズもこんなふうにしたら、さぞかし素敵だろうと思い、

床に散らばったフィズの髪を思い出して顔をしかめました。

それを傷の痛みと勘違いしたさっきの看護婦はひざまずいて足の手当てを始めました。

 ジョアンナはいすの上に足を乗せたジュリの横に、自分の椅子を引き寄せました。

「あなた、お名前は?」

 ジュリはなぜか本当のことをいってはならないような気がして

「ジュ……ジャンです」と、とっさに思いついた名前を言いましたが、

ウソをついたことに自分自身で驚きました。

 これが人間になるということなの……。

もう天のお父様はわたしを愛してくださらないのだわ……。

「そう。ジャンさんって仰るのね。靴はどうなさったの?」

 その時ジュリは、靴を履いていないことに初めて気がつきました。

人間が靴を履くことは知っていましたが、いざ自分が人間になってみると、

一度にいろんなことがおきて、とても靴のことなど思い出す余裕などなかったのです。

そういえば、歩きながら足の痛みを感じていましたが、

それは神のご加護がなくなったせいだとばかり思っていたのです。

どう説明したらいいのか分からず俯いてると、

「そうだわ、あの方の履かなくなった靴があったはずね。マーリン、持ってきて下さいな」

「はい。奥様」

 付き添いの中年に差し掛かった女性が答え、

間もなく茶色の靴を大事そうに抱きかかえるようにしながら戻ってきました。

「これでよろしゅうございましょうか」

「どうもありがとう。あなたはもう下がってくださっていいわ。ご苦労様でした」

 マーリンはジュリの足元に靴を置き、女主人に一礼すると部屋の奥に消えました。

「さあ、裸足では困るでしょう。ちょっと履いてみてくださいな」

 ジュリが包帯を巻いた足を入れてみると、

靴はそって包み込むように彼の足に寄り添うのでした。

「あら、ぴったり。でも包帯が取れたら、きっとブカブカになっちゃうわね」

 楽しげに言うその笑顔は、まだ乙女の純真さを漂わせていました。

「そうだわ、ジャンさん。お食事なさっていきませんか?」

 慌てて看護婦が口を挟みました。「ですが奥様。奥様のお体がお疲れでは――」

「いいえ、私は大丈夫よ。それに余計なことを考えるより気晴らしになる事をしなさいと

仰ったのはお医者様だわ。この家にお客様がいらっしゃるなんて

久し振りのことですもの、なんだか嬉しいの」

 目の下に隈のある瞳がジュリに振り向きました。「ね、よろしいでしょう?」

ジュリは懇願するようなその瞳に頷きました。

 

(続く58へ)

どういう展開ですかこりゃ?

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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

おへんじ。んぐたーん。

そだね、人間として扱われた最初の経験てことになるね~。
なるなる。
いい事に気がつかせていただきましたニャ。
そういうことを踏まえられるかどうかは分かりませんが、
意識しながら続きを書かせていただきまーす。
はらはら……^-∀-;^

そっか~。人間だから嘘をつけるのか。。
にゃるほろ。赤ん坊だって嘘泣きをするもんね。うんうん。

えっと…ジュリが人間になってから、初めてフィズ以外から受ける優しさかな?
…むむむ。ちょっとこの先の展開にドキドキ…
(◎∀◎;)

おへんじ。いき♂さーん。

わほーぅ。さすが読みが深いニャね~。
追求しないやさしさ、気が付いていただけましたかニャー。ありがとねん。
天使がまことの人間になるとき。そうかー。そうだったのかー。
いつもいい事教えてもらっちゃうにゃ~。うにゃにゃ。←作者が一番分かっていない

ウソって、人間しかつかないの? 動物はいつも真剣勝負かな。
動物も罠を仕掛けたりはあるけど、それだって命をつなぐためであって、
自分の快楽や欲望のためとは違うニャね。

おへんじ。化け猫ちゃんさ~ん。

シショーとはですね、「天邪鬼シショー」のことニャ。うしし。←相変わらず失礼
化け猫騒動? なにそれ~? 
検索したら分かるの? あとで見てみヨット。

天邪鬼を競わせたら、えめるも負けはしませんニャ。
……あー。やな戦い。^-∀-^
ん?あれ? シショーとは闘わないよ。
シショーにはきっと誰も敵いませんからニャー。←怖いもの知らず発言

ジョアンナがこのままいい人でおわるのか、はたまた誘惑者になりえる人物なのか……?
ねえ。どうなの?

にゃん子さんが水向けてくれたからちょっと余計な詮索しちゃうとね~、
グレンドリン伯爵の愛人になる女だよ?
可愛い無邪気さの裏には悪魔が隠れているかもしれないよ?
男はそういうものにころっと騙されるものでしょ?
いいんだけど。同性の醜さは同性にしか見抜けないものかもしれませんからニャ。
一般論。

嘘をつくことができてしまった驚きと、婦人が見せた、相手が言いにくいことを追求しない優しさ。
人間が嘘をつくことを知っているジュリが、相手の嘘を見抜きながらも騙されてあげるようになったとき、ジュリは本当に人間になっちゃうのかな、とか思ったり。

シショーとな
猫は化けるのですぞ
猫化け騒動の地は我が故郷
オネコもお気を付けあそばれよ

優しき婦人がおられ、ジュリは幸せものでニャーか
かよわき姿が女心を掴み、優しい心を引き出すのでやんしょうか…

びっくりにゃん子も…
あっ化けの皮が、、、フニャン!(//△//)
sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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