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【山の宿】2

(前のお話1)

  

 それにしてもここは静かだ。

食器がぶつかる高い音や、鍋のふたが立てる金属的な音も聞こえない。

厨房はこの建物の奥の別棟にでもあるのだろうか。

こんな場所じゃどうせ出てくるのは作り置きの煮魚や野菜の煮物だろう。

俺は鞄から書類を取り出すと、目を通し始めた。

 間もなく、今度はかすかに廊下をきしらせる音がした。

「お食事でございます」

 予想に反して料理は見事なものだった。

新鮮な海の幸、山の幸がふんだんに盛られ、細工も施されている。

やはり腕のいい板前がいるに違いない。

「今夜は冷えますねぇ。一人寝は堪えますでしょう」

 その言葉は、栄えた温泉地にありがちな秘密めいた楽しみを連想させたが、

こんな山奥の一軒宿に、そんな女性がいるとは思えない。



 風呂場の入り口は男女別だがその先は混浴の温泉になっていた。

湯に浸かっていると、さっきまでの不快感がすうっと消えていくようだった。

 部屋に戻ると、既に布団が敷かれていた。

布団に入るとすぐに風呂場のほうからザーッと湯を掛け流す音がきてきた。

老婆かそれとも――

俺は間もなく眠りに落ちた。



 夢の中で、廊下のきしむ音を聴いた気がした。

そのかすかな人の気配は部屋の前で止まり、

戸をあけて誰かが部屋に入って来る。

俺はまだ半分眠っていながら、その気配を感じていた。

衣擦れの音と同時に石けんの香りがして、

湯の流れる音を思い出した。

そのまま目を閉じていると、女が布団に滑り込んできた。

若い女の、弾むような息遣いがすぐそばにあった。



【続く】

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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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おへんじ。そらまめちゃ~ん。

いらっはーい。はいニャ。
オネコはここで書くことで小説文章のお勉強をしております。
ここでねー。って、高が知れてるって(苦笑)

赤川次郎の本は、あろうことか一冊しか読んだことがありません。
家に文庫が何冊かあったんだけど、小学校の頃だったかな。
題名も思い出せませんが、あ、思い出した。ミケネコホームズだよ。
読みやすかったと思うけど、きっと子供過ぎて、面白さが分からなかったんだな、それっきりになりました。
でもそんな有名人の文体に似ていると言われて、
ちょっと面映い気分でございまーす。
ああ勿体ニャイ。←なんでも良い方にしか取らない身勝手ネコの脳みそ

えめるの好きなのは、つい最近読み始めた遠藤周作。
一昨年の夏から始まったキング様。
あと、川上弘美。
その昔は谷崎文学の怪しい世界に惹かれるものを感じたことも。

物事の本質を突くとか、ちょっと現実感の乏しい変な世界(阿倍公房)とか。
そういう「夢」を見たいのです。
^ёωё^←現実を見たがらないネコ

おへんじ。白馬童子さーん?

誰じゃ~(笑)わかってるけど。
そもそも白馬童子って、懐かしのヒーロー特集で若かりし頃は2枚目だった人でしょ?
あの俳優さん、まだ生きてるの?←あぇ?失礼にも程があるの?

妖艶なムード、いい感じに醸せていましたでしょうか?
下品なもの、あからさまなもの、汚い表現を嫌っているメルヘン大人えめるです。
(でも、S・キングのびっくらセリフには慣れた)
色気のある文章を、心に迫るようなお話を書きたいんです。
とんでもないびっくらショッキング話じゃなくってね。
いかにもありそうなウソの話を、
いかにも自分が体験してきたかのように、
生き生きとした文章で書きたいんです。

今回どこまで成功してるのかどうなのか、自分じゃ分かりません。
でも、早くと仰っていただけたので、
まあまあ効果はあったと思ってもいいでしょうか?

これは遠い昔に読んだことのあるお話がもとになっています。
ストーリーはおぼろげながら、イメージはしっかり残っていました。
こういうのを2次作品とかっていうのかな。

作品がどんどん出来上がっていって、スゴイ勢いですねぇ♪
羨ましいかぎりです。うっうっ。

【thank】でも思ったのですが、えめるさまの文章はどこか赤川次郎(だったかなぁ?)
を思い出させます。
(私の場合その辺りしか知らないとも言う・失笑)

えめるさまはどんな作風・著者がお好きですか?
続編期待してま~す。

うーむ…
なんとも妖艶なムードを漂わせて…続く
とな
まさか、相手は妖婆では…Σ(゜ロ゜ノ)ノ
先が知りたいのじゃ
早く…してくだされ
sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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