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BABY’S BREATH -カスミソウ-

 

 さらさらとなびく髪が印象的だった。

涼しい横顔が誰かに似ていると思った。

恋人を待っているのだろうか、目立たぬ程度に辺りを見回しているが、

その美しさは広い公園の中で、遠くからでも人の眼を惹くのに充分だった。

まるでそこだけ光が集まったように、輝いている。

僕は自分の眼をこすった。

 どんなヤツがこういう人の彼氏になるんだろうと

羨望とやっかみの入り混じった好奇心を抱きながら、

それを確かめる時間を持たない僕は、

僕を待っている人に会うため早足で彼女の前を通り過ぎ、振り返らなかった。

 

「ねぇ、晋也。運命って信じる?」

 僕はだまって頷き、白くやさしい左手に指輪をはめた。

彼女は微笑み、「大事にしてね」と囁くと、定位置である僕の左腕に絡みついた。 

 なんだか重いな――

それは指輪の重さをこえて、永遠という時間を感じさせた。

これから僕は一生この重さを背負って生きていかなくてはならないのか――。

そう思ったら、腕に伝わる暖かさが急にうっとおしくなった。

男なら、こんなときは誰だってそうじゃないだろうか。

 彼女は僕の顔を見上げて言った。

「今夜は特別に美味しいもの、食べようね」

 きっとあとでまた部屋のカレンダーにマークなんかつけておいて、

これから毎年この日を記念日にしようとか言うに違うない。

もう既に僕らの記念日は、両手に余るほど作られていた。

 頼りなくて甘えん坊な彼女が愛おしくてたまらなかったのは、大分前のことだ。

互いを最高の伴侶と錯覚するには、僕らは長く付き合いすぎていた。

彼女の甘えの奥に潜む束縛感が僕に心を決めかねさせて、

付き合いがだらだらと長引いた原因のようにも思える。

運命なんて信じちゃいない。そんなものは夢を見たい人間の言い訳だ。

あるのはあきらめ――。

夢をあきらめた少年最後の日のように、もう一つあきらめ方を覚えただけのこと。

それが生きていくということ。

「一生大事にするよ」

 それはまるで他人が言ったように、何所か遠いところから聞こえた。

「ね、のどが渇いたわ」

 僕らは腕を組んだまま自販機のあるほうへ歩き出した。

その時どこかで教会の鐘が鳴り出し、

僕の心はあの日のカスミソウ畑に帰っていった。

 

 遠い子供の日に夢見たこと。小さな可愛い約束――。

あの日、僕と未衣奈は指切りをした、近くの教会の鐘が鳴るなかで。

「大人になったら結婚しようね。十年後」と、汗ばんだおでこをつき合わせて。

カスミソウ畑の中で、二人は無邪気なアダムとイヴのように手をつなぎ、 

ここで必ずまた会おうと――。

 そして未衣奈は引っ越していった。 それから僕は毎年春になると、

カスミソウを部屋に飾って、淡い夢を育てていった。

十年たって、僕はその場所に行ってみると、

カスミソウ畑は大きなビニールハウスが立ち並ぶ園芸屋になっていた。

君は来なかった――。

七才の約束は、十七歳になった僕らには、もう時効だったんだ。

 

 あの時小さな小指を絡ませて、一緒に言った言葉。

君は、微妙に口ごもったような感じで、ちょっとだけずれて聞こえた「十年後」

夢は夢のまま、二十年――。

園芸店はつぶれ、この公園になった。 

そして僕は、君じゃない人と結婚する。

君もきっと、素敵な人と一緒にいるんだろう。

僕が今日ここで指輪を渡すことに決めたのは、

君への想いがまだどこかに残っていたからかもしれないな――。

 

 公園の花壇の一角に、カスミソウが咲いているのが見えた。

そうだ。今日は花屋に寄って帰ろう。

彼女はバラとかユリとの派手な花が好きだけど、

今日だけはカスミソウの花束を買おう。

カスミソウの花のように可愛いかった君への最後の言葉として。

君の小さな花のようなくちびるが動いた、十年後。

僕は夢を忘れられないまま、二十年後。その次はもうないから――。

 そうか! そうだったのか! 

あれは、ずれたんじゃない、彼女は二十年後と言ったんだ!

今日がその約束の日!

 僕は慌てて、後ろを振り返った。きっといる。

彼女が「どうしたの?」と不審そうな顔をした。

「ごめん、急用を思い出した、本当にすまない、結婚はなかったことにしてくれ。

あとでいくらでも話は聞く、兎に角いまは行かなくちゃならないんだ、ごめん!」

手を振りほどきながら一気に言って、僕は全速力で走り出した。

 

 その姿を見つけるのは簡単だった。

光り輝く姿は目立っている。あの人はまだ同じ場所にいた。

「ミーナ!」

 期待に満ちたな不安げな眼差しが、ぼくに向けられた。

「――シンちゃん? 本当に、シンちゃん、なの?」

一語一語確かめるように発音された言葉が、耳に心地よかった。 

 

「なあ。運命って信じるか?」

「うん、もちろんよ」

 未衣奈は僕の肩に頭を乗せて、頷いた。

 

【終わり】

 

 

四月の誕生花。カスミソウの花言葉は、無邪気・切なる思い。

いかがでしたかニャ?

題材としては、もの凄くありふれているものでした。

どこかで読んだことがありそうなお話しだニャーと、えめるも思ってるし。

でも、愛は人間の永遠のテーマだから、ま、いいじゃん。

だってほれ。

毎回、恋はチミにとって、新鮮なはずだし。

あ? ああ?

恋なんか飽きるほどして、もうすべて分かっちゃってくだらなく感じるデスと?

ふうん。

そういう人は、心が固くなってるのニャ。

ほれほれ。

もみもみもみ。あ。爪が。すまんね。

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>>んぐたーん。

あいあー……あぇっ? ずるいの?この男っ。

えめる的には美談だったのニャけどな。
むー。これが男と女の違いってことかニャー。
なるなる。勉強になったニャからね。よくわかんニャイけど。

まあね、たしかに、捨てられた彼女がこりゃあ惨めだニャわね。
でもね、女の立場から言わしてもらえば、
男に寄りかかってすっかり安心してるほうも甘かったのよ。
この男はね、そういう魂胆がイヤというか、世間一般の幸せといわれるものに、
本当は魅力を感じていないのよ。
男はこのとき、全てを捨てて走っていった。純粋な気持ちで。
でも彼女のことも本当にね、ちゃんと好きなはずなのね。
でも、いつまでも、少年のハートを持っていたんだわね。
そこんところは、えめるがいつまでも少女のハートなのと同じよ。
え?
だからって、えめるがずるい女ってことにはならないからニャね。
こんな素直な天邪鬼、他にいないから。^・ω・^

無垢と無知はほぼ同義語?
一途さを貫くことは誰かを傷つけること?
うーむ。一気に深いテーマになったニャ。コメント欄がっ。あ?(笑)

深めてくれたお礼に、はい。
えめる特製干しブドウとにんじん入りホットケーキ。
本気で美味しいのニャー。

えめるん…

ホントは男なんじゃ?(爆)

…と思わせるほど、男のズルい心理がわかってる。
(((;;゜Д゜;;)))ガクブル

>>時の流れだどんさーん

あい?えめるは天使のハートニャからねー。
おおー! うるるしてくれたのっ!? そりゃあ最高に嬉しいニャ。
やったー。

なるほど。古くなった頃に本当の姿が見えるのかニャ。
いいものが見えるといいニャね。なーんだ、ってことじゃちと残念にゃから。
でも、なーんだってなってから、それでも、ってなったらまたよし。

束縛ッ!? 
もうね。ネコだからさ。自由にさせてくれないとねー。
えめるの自由なんて、たかが知れてるけどね。
えめるはおいしいえさと居心地のいいキャットタワーがあれば、
あとお外にのんびりお散歩の自由があれば、文句言わないのニャね。
でもね。よそのネコにケンカ売られたときは、すぐに逃げるからいいんだけど、怪我とか迷子になっちゃったときには、たしけてーって思うのね。
それ以外は文句いわニャイのね。
あと、えめるが遊んでほしいときは遊んでクレニャイと爪立てるニャ。
遊びたくないときにネコじゃらししつこくちらちらされても、無視するにゃ。
あとは文句いわニャイのね。
ごはんはいつも同じ味だとちと拗ねるニャ。
後は文句いわないのニャね。
あ?

なんか、登場人物の女性は、えめるさまのプロフィールのようなイメージですね
読んでる内に、ウルルッ、、、…(ノД`)゜・。・ってなりました

指定席の左腕が重くなったのは、マンネリ化したのではなくて、相手が違っていたのですね

未衣奈との仲がこれからそうならないことを祈ります

いつか色褪せてセピア調になった時に本当が見えてくるのかも知れませんね

新たな分野で頑張るえめるさまに拍手~♪

ところで、えめるさまは束縛されるのが嫌いなのかな??
sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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