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【 raise 】育てる-4-

【前のお話   
 
「珍しい植物……ですか」

 私は思わず身を乗り出しました。私は植物の研究をしており、研究所のほかに

自宅の一部を改装した温室で、世界中の貴重な植物を栽培しているのです。 

伯爵はそのことを当然知っていて、だからわざわざこんな私に

話をもちかけてくれたのだと思いました。


「それは興味がわきますね。それでどのような花が咲くのですか」

 伯爵は目を閉じて、「ええ、それはもう、目も覚めるような素晴らしい花が……」

まるで夢見るような声で言ってから、真剣な眼差しを私に向けました。

その瞳に何か尋常ではない光が宿ったように見え、一瞬ドキッとしたのですが、

すぐに何時もの礼儀正しい表情を取り戻ました。


「後ほどお目にかけますよ。ですが先ほど申し上げたとおり、あなただから、

私としてもこうして特別にお話する気になったのです。

それと、もちろんタダで種を差し上げるという訳には参りません。

私もかつて、それ相応の代金を払って、ある外国の方からその貴重な種を譲り受けました」

「相応の代金、と仰いますと……」

 答えを聞く前に、既に私の頭の中では、運用していた資産の一部を

売る事を決めていました。

 
「いいですね、このことはくれぐれも、私たち二人だけの秘密ということで……」

 私は、承知していることを示すために黙ってうなずきました。

「私が育てているものをお見せいたしましょう。こちらへ」

 伯爵は部屋の一角を仕切っている金糸の縫い取りが美しいカーテンの前までくると、

紐を静かに引きました。

   
 そこはまた、小さなもう一つの部屋といったふうでした。

シックな長椅子とテーブルが壁際に寄せて横並びに置かれ、

小さな壁掛けの照明がひとつあるだけでしたが、

空間の真ん中には見事に葉の生い茂った、鉢植えがありました。

 幹は伯爵の身長よりいくらか低い程度で、その中間がやけに膨らんでいます。 

「種が取れるかどうかはまだ確実といえません。しかし順調にいけば、

おそらくクリスマス前には種が取れるでしょう」

 と嬉しそうに言いました。

 幹の中に実がなるとは、なんとも不思議な植物です。そんな話は、

いまだかつて聞いたことがありませんでした。

 私は秘密厳守と書かれた用紙にサインをしたあと、

夢見心地のまま家まで歩いて帰りました。

 

 このようにして私は、この素晴らしい植物の種を手に入れることになったのです。

 
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

お返事。チャンさんヘ。

いつもありがとうです。
動物、イヤはニャ、さすが。

続きを読んでいただけるのは、物語を作る猫にとって、
一番の幸せですのね。
嬉しいお言葉、勿体ないですにゃよ。

オネコは昨夜から、遠藤周作「女の一生 一部・キクの場合」
を読み始めました。何日か掛かりそうです。
んじゃ、続き、読んできます。
って、お話作らんかいって話だったニャね。す……すまんっ。

No title

幹の中に種が…??
なんと、動物みたいな植物かな??
後はどんな謎があるのかな??
早くおせーてちょ(^^)√
sidetitleこういうものですsidetitle

えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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