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誕生日

父は職場でその連絡を聞いたそうです。

「その日は朝から落ち着かなくてね、今か今かとそわそわしながら、授業(当時は教員)も何だか上の空でさぁ。
そのうち産院から連絡があって、今産まれましたって聞いて、待ってました、すぐ行きますってンで、教室を自習にしてさ、大急ぎで駆けつけたんだよ

そしたら病室の部屋の入り口に看護婦が立ってたんで、(意気込んで)男かい女かいって聞いたところが、女の子ですって言うんだよ。それ聞いて、ハァー、なーんだ女かって。俺ァえらくがっかりしちまってさ、目の前が部屋なんだがそのまま踵を返して、赤ん坊の顔も女房の顔も見ねぇで帰っちまったよ。

うちは一人目が女だからね、一姫二太郎とも言うし、次は絶対に男が欲しくてさ。それに、女房の腹がとがった感じだったから、誰が見てもこりゃあ男の子に違ぇねぇって言うもんだ。そうかよし男だって、こっちは早いうちから名前決めて楽しみに待ってたわけだ。それがいざ生まれてみたら女だってんだもの、そりゃーがっかりするべよ。

そのあと一旦仕事場に戻ったところが、さっき出ていったばかりでもう帰ってきたもんだから、あんまり早いから、おいお前どうしたって聞かれたけどね。
どうにもこうにもハァ授業する気になれなくて、その日は早退して家に帰ってきちまったよ。

はなから(最初から)男だと決めつけてたから、男の子の名前しか考ぇてなくって、名前をどうするったって、女の子の名前がどうも思い浮かばなくてなぁ。考えてはいるんだが、どうしても男の子の名前ばかりが浮かんでくるんだよなぁ……

結局そのまま何日も経っちまって、気が付いたら届け出の期限が今日だってわけなんだよ。あっれぇ、大変だってんでさ。名前つけない訳にいかねぇし、かといっていい加減に付けるワケにいかねぇし、こりゃ困ったってんで、神主さんに頼むことになったわけさ

神主が二っつ、筆で名前を書いてくれて、赤ん坊の前に並べて置いて。こったとあっち、赤ん坊が(ハイハイで)向かった方で決めたんだよ」



#


父にしてみればこの話は、友人をもてなすため、場を盛り上げる得意話のひとつだったようです。
父は其れまでにも何度となく客人たちに意気揚々と語っていました。そして幼い私はその様子をすぐそばで見て聞いて、愉しい話なんだな程度に感じていました。

しかし、ある日曜日の庭先で父からこの話を聞かされた近所の奥さんの反応は、それまでの人たちとは少し違っていました。
父の隣に大人しく座っている私を見ると、少し口元を歪めるような微妙な笑顔でこう言ったのです。
「でも、そんなこと言ったって、今は(その子が)可愛いんでしょう?」
一瞬の間が空いて
「そりゃあ、そうだよぉ」と父は威勢よく答えました。いつもの人懐っこい笑顔でありました。




私は長い間、この時の違和感を、心の奥に仕舞い込んだままでした。
そして人生の転機を迎えた今、全てを思い出したのです。
これまでぼんやりとセピア色に薄めて隠されてきた古い記憶が、まざまざと色付けされ、新たな意味を持つ形となってすべて繋がったのです。


父に他意は無かったと思いますが、やはり普通の感覚とは少し違う面もあったようです。
このことから何年も後ですが、父が何度か、神社で名付けた話を私にしてくれた時がありました。
今思うに、あの時の罪滅ぼしだったのかもしれません。




勿論、父は私を決して嫌ってはいませんでした。私も父を心の中で、祖母と同じくらい好きでした。

「お前の名前は神様から戴いた、いい名前なんだから」
うん。良くわかっているよ、有り難う。お父さん……。

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さすがは えめるさん

『みんな、心のどこかに何かしら、
何かに対してわだかまりを持っているわけで
そういうものがあるからこそ、
お互いを大事にしなくてはと思える
陰と陽があるからこそ、
この世界は目を見張るほどに色づいていくのですね 』

いやあ
素晴らしい (^^)g
フレーズが 心に 入ってきます
まさに 真理をついていますねえ
さすがは えめるさま
この文章 使わせてもらっていいですか?
クメールの どこで どのように 使うかは まだ 未定ですが
えめるさまの名前を引用で 入れた方がいいかどうかも
意見ご指示 頂戴ませ m(__)m

クメゼミ塾長さんへ

ほっとして。。。確かにそういう部分があるね、さすがはクメゼミ塾長さん^^
えめるの安全地帯はね、自分の中で見つけ出すしかないのですな

えめるには、3つ名前があります
1つ目は、人間として神主さんがつけてくれた名前
2つ目は、ねこのハートの名前
もういっこは、存在としての名前とでもいうのだろうか、
これはもしかしたら宇宙人としての呼び名かもしれませんw

みんな、心のどこかに何かしら、
何かに対してわだかまりを持っているわけで
そういうものがあるからこそ、
お互いを大事にしなくてはと思える
陰と陽があるからこそ、
この世界は目を見張るほどに色づいていくのですね

古い記事にコメントさせていただきます

こんばんは
大変ご無沙汰して ごめんなさい

えめるさんは えめるさんのままで
ホッとして自分の故郷に帰ってきた気がしました

名前の由来
親は何気なく酒の肴のつもり位の軽い話が
後で子供の心に重い鉛を与えてしまう

私も 男の子がいいと思っていたら
女の子で がっかりしました
でも 子供や周りには一切そんな話はしませんでした
今思うと女の子でよかったと思っています

それと
その子(長女)を大切にしたことをきちんと大人になってからも
伝えました
長女は他の兄弟より大切にされなかったと思っていたようです
結婚式の時も 長女命!!位に気持ちを伝えました
今は複雑な気持ちは払拭されたようです

えめるさんの名前の由来のお話で
思い出した次第 m(_ _)m

熱中症・夏バテに気を付けましょう
コメントありがとうございました
嬉しかったです

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えめる。

Author:えめる。
ネコの心のえめる。です。
同じ名前の人がいつの間にか
チラホラいるようなので
。を付けました

ねこ人間のプロトタイプ
品質最低で^・ω・^すまんね。
いちおう言っとくけど
永遠の22歳ニャからね。
ハートがっ。


ちなみに脳内は5才くらい
ほんとすまんね。

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